先日、本屋さんで星野道夫さんの『魔法の言葉』と言う文庫本を買った。久しぶりに星野さんの言葉が聞きたいと思ったのだ。
2011年の1月に『旅をする木』を読んで、星野さんの生き方や感性にとても惹かれた。アラスカの自然のスケールの大きさや、その自然の中のほんの小さな身の周りの移り変わりを感じる視線やその世界観に、読み進めるのがもったいなくて、本当にちょっと読んでは目を閉じて、想像しては私も感じようとしていた。
『魔法の言葉』は講演を集めていて、写真もいくつか掲載されているが、中でよく出てくるカリブーという生き物の写真はなかった。どういう姿かと考えていたら、松屋銀座にて「没後20年 特別展 星野道夫の旅」(8/24〜9/5)がちょうど始まったので、見に行った。
カリブーの大移動のほか、クジラ、ヌー、クマ、オーロラ、ハイダ族の本当のトーテムポールなど本を読んだ後だったので、一つ一つを確認するように見ることができた。
それにしても、講演の記録の最後は1996年5月に八ヶ岳で行われたものだ。スケジュールが詰まっている中で1週間日本に来た中で、講演をしていったようだ。
最後にアラスカに18年もいた理由について語っているが、過去形で語られたようで、その後の運命をすでに受け入れていたような、そんな気がしてしまう。
帰り際に、会場で売っていた『長い旅の途上』という文庫本を買った。
まだ読み始めだが、最初の章の「はじめての冬」から引用したい。
星野さんにとっては18年目の、そして彼の1歳に満たない息子のはじめての冬。やっと歩き始めた息子がベットから落ちて、泣いている時、
それなのに、ぼくは泣き叫ぶ息子を見つめながら、”この子は一人で生きてゆくんだな”とぼんやり考えている。たとえ親であっても、子どもの心の痛みさえ本当に分かち合うことはできないのではないか。ただひとつできることは、いつまでも見守ってあげるということだけだ。その限界を知ったとき、なぜかたまらなく子どもが愛おしくなってくる
星野さんの言葉は、まるで私自身に言われているように感じる。考えさせられる言葉がいくつもある。急いで読むのはもったいない。これからゆっくりと噛み締めながら読みたいと思う。そして考え続けていきたい。