腐る経済

東京新聞の特報に島根県の山あいでパン屋を営む渡邊格さん、麻里子さんが紹介されていた。日本にしかいないとされる天然こうじ菌でパンを作っているという。イーストではなく、最近よく目にする天然酵母パン種でもない。業者から天然酵母を買うのではなく、天然こうじ菌を取るところからパン作りが始まる。麹の発酵に向き合ううち、菌から金へ、発想は資本主義の行き詰まりを突破する鍵につながり、出版した本は一風変わった経済書として注目されているそうだ。早速紹介されていた本を買ってきた。

 

東京新聞の記事より)

「腐らないものは自然の摂理に反している。資本主義経済の行き詰まりを突破する鍵をマルクスの『資本論』と、菌が教えてくれた」

 

 

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

 

 

自然界のあらゆるものは、時間とともに姿を変え、いずれは土に還る。それが「腐る」ということだ。その変化の仕方には大きくふたつある。「発酵」と「腐敗」ーー。それを引き起こすのが「菌」の働きだ。(P.72)

腐る、と発酵はどう違うのか、同じ菌の仕事でも人間にとってこの違いはどういう意味か。なぜ、腐ったものは食べられないのに発酵食品は体に良くて人間のためになるのか。以前から思っていたことがこの本を読んだらわかった気がした。そして、そのほかの色々なこととすごく繋がってくるのを感じた。

 本によると、素材が人間の生命を育む力を備えている場合、菌は素材を、人間を喜ばせるパンやワインやビールのような食べ物へと変え、食べ物をよりおいしくしたり、栄養価や保存性を高める。一方で、生命を育む力を持たない食材は、食べないほうがいいよと人間に知らせるために、無残な姿へと変える。

時間とともにあらゆるものはいずれは土に還る。

一方、人為的に作り出した食品では時間とともに変化することを拒み「腐らない」食べ物がある。「腐らない」食べ物が「食」の値段を下げ、「職」をも安くする。

 そして、時間による変化の摂理から外れたものがおカネだ。

「腐らない」おカネが、資本主義のおかしさをつくりだしていると渡邊さんは言っている。

 

他にも菌の教えてくれることはとても興味深い。一気に読んでしまった。

私は私が食べたものから出来ている。時々冷蔵庫の中でとっくに期限が切れてしまったけど、腐らないおかず、一週間くらいしてもカビの生えないアメリカンチェリーやパン、そうしたものを食べている身体はどうなっていくだろう。

現実的に私たちはそういうものを日常的に食べていて、結果寿命は延びているように思える。

そして死んでも最終的に腐って土になることもない。

 

一方通行で行き止まりではなく、循環していたいと思う。

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